なつ(8)

はぐれ者カラス真昼の道の上、小さな影を引きずり歩く

飽きもせず雨降り続き白露の飾り重たきツツジの花弁

青白のシオカラトンボやすやすと短き稲の間、潜り抜けたる

なつ(7)

ヒメジョオンばかり咲きたる野の原は白く波打つ風吹くたびに

空を行く黒雲のごと足早に自転車過ぎさる夕立の前

オオムギの揺れる穂先に腰掛けて揺れては飛び立つスズメの遊び

はる(10)

朝起きて日の出を見たり電線の上のスズメと同じ目線

真っ直ぐに伸びるロープにオニヤンマ、羽を休めて顔を掻きたり

大雨の一晩明けて天空の水あふれたる河原の歩道

はる(9)

春風を斜めに受けて胸そらし 今年のツバメも見事に飛べり

どんぐりが目を覚ましけり重たげな我が身もち上ぐ春の林床

たんぽぽの花をまたいで荒れ果てた畑地の藪に猫は消えけり

ふゆ(2)

庭の奥、バケツに張った氷にも冬の朝日が差し込み始める

真っ白な雪の野原にてんてんと狸の足跡、丘を越えたり

常ならず 木の実咥えたヒヨドリは梢に居ても無口なままか

ふゆ(1)

横たわる黒雲の上の冬の日は沈み込む前、輝きを増す

雪の舞う野原に残る枯れ枝のモズは静かに狩場を見つめる

草の葉の地面に広げた手の上にしっかり残る霜の輪郭

あき(3)

アオサギはバサと飛び立つ金色の稲穂の揺らぎ後に残して

地に伏せた黄揚羽哀れ数匹の蟻近づいて風吹き止まず

あぜ道を自転車こいで進みけり山並みの輪郭清き秋の朝