ふゆ(1)

横たわる黒雲の上の冬の日は沈み込む前、輝きを増す

雪の舞う野原に残る枯れ枝のモズは動かず狩場を見つめる

草の葉の地面に広げた手の上にしっかり残る霜の輪郭

あき(3)

アオサギはバサと飛び立つ金色の稲穂の揺らぎ後に残して

地に伏せた黄揚羽哀れ数匹の蟻近づいて風吹き止まず

あぜ道を自転車こいで進みけり山並みの輪郭清き秋の朝

なつ(6)

ツユクサの小さく青い花の上に夏の青空こぼれ落ちたる

空色のトイレのタイルの真四角を斜めに抜けるハエトリグモかな

雑草の海に埋もれた畑から空を仰げば秋の雲行く

はいく(1)

曇天を切り裂いて飛ぶツバメの仔

対岸はすべて新緑 川の端

類を呼ぶまた里芋のおすそわけ

年に一度カワセミに逢う佳き日かな

蝉の音にくるまれて行く森の道

はる(8)

晩冬の夜明け近くの群青の空のどこかで烏が鳴けり

薄桃の桜並木の陰ぬけて春の日差しを再び浴びぬ

ツバメからツバメに繋ぐ大空の曲線やまず動き続ける

あき(2)

桑の木の下半分をオレンジに染めつつ沈む秋の夕陽

電線にちょいと乗りつけ、くるくると尾羽根ふるわすモズの到来

縦横に枝を巡らすクスノキの下を通って近道すなり

あき(1)

四枚の羽輝けるアキアカネ、影なき道をまっすぐに飛ぶ

夕空に肋骨みたいな雲浮かび涼しい風吹く秋の入り口

月を呑みまだらに光る夜の雲ゆっくり漂えクラゲのごとく