なつ(6)

ツユクサの小さく青い花の上に夏の青空こぼれ落ちたる

空色のトイレのタイルの真四角を斜めに抜けるハエトリグモかな

夏草の海に埋もれた畑から空を仰げば秋の雲行く

はいく(1)

曇天を切り裂いて飛ぶツバメの仔

対岸はすべて新緑 川の端

類を呼ぶまた里芋のおすそわけ

年に一度カワセミに逢う佳き日かな

蝉の音にくるまれて行く森の道

はる(8)

晩冬の夜明け近くの群青の空のどこかで烏が鳴けり

薄桃の桜並木の陰ぬけて春の日差しを再び浴びぬ

ツバメからツバメに繋ぐ大空の曲線やまず動き続ける

あき(2)

桑の木の下半分をオレンジに染めつつ沈む秋の夕陽

電線にちょいと乗りつけ、くるくると尾羽根ふるわすモズの到来

縦横に枝を巡らすクスノキの下を通って近道すなり

あき(1)

四枚の羽輝けるアキアカネ、影なき道をまっすぐに飛ぶ

夕空に肋骨みたいな雲浮かび涼しい風吹く秋の入り口

月を呑みまだらに光る夜の雲ゆっくり漂えクラゲのごとく

なつ(5)

湧き上がる入道雲の瘤の上の空の青さは変わらざりけり

鮮やかな百日紅の花 目印に見知らぬ路地に迷いこみたり

水無月の満月照らす農道を影一人連れ気ままに歩く

なつ(4)

明け方に沸き立つような椋鳥の声で目覚める夏の真ん中

雨音と雨の匂いに身を委ね遠い昔を思う夕暮れ

葛の葉をかきわけ森に帰ろうと、もぞもぞ急ぐ小綬鶏の仔