はる(10)

朝起きて日の出を見たり電線の上のスズメと同じ目線

真っ直ぐなロープの上のオニヤンマ、羽を休めて顔を掻きたり

大雨の一晩明けて天空の水あふれたる河原の歩道

はる(9)

春風を斜めに受けて胸そらし 今年のツバメも見事に飛べり

どんぐりが重たき我が身を持ち上げて 新芽を伸ばす春の林床

たんぽぽの花をまたいで荒れ果てた畑地の藪に猫は消えけり

ふゆ(2)

庭の奥、バケツに張った氷にも冬の朝日が差し込み始める

真っ白な雪の野原にてんてんと狸の足跡、丘を越えたり

常ならず 木の実咥えたヒヨドリは梢に居ても無口なままか

ふゆ(1)

横たわる黒雲の上の冬の日は沈み込む前、輝きを増す

雪の舞う野原に残る枯れ枝のモズは静かに狩場を見つめる

草の葉の地面に広げた手の上にしっかり残る霜の輪郭

あき(3)

アオサギはバサと飛び立つ金色の稲穂の揺らぎ後に残して

地に伏せた黄揚羽哀れ数匹の蟻近づいて風吹き止まず

あぜ道を自転車こいで進みけり山並みの輪郭清き秋の朝

なつ(6)

ツユクサの小さく青い花の上に夏の青空こぼれ落ちたる

空色のトイレのタイルの真四角を斜めに動くハエトリグモかな

雑草の海に埋もれた畑から空を仰げば秋の雲行く

はいく(1)

曇天を切り裂いて飛ぶツバメの仔

対岸はすべて新緑 川の端

類を呼ぶまた里芋のおすそわけ

年に一度カワセミに逢う佳き日かな

蝉の音にくるまれて行く森の道