なつ(1)

片隅でまとまって咲く鬼百合を順に訪う揚羽蝶かな

意気揚々、林の中に逃げこんだ 雉の足取りだけは勇まし

羽ばたいてしきりに鳴いて後を追う 雀のオスに幸あれかしと

はる(7)

蝶二つもつれるように飛びあって ただただ静かな祠の木陰

草の葉の細いところを掴みつつ なぜか落ちない天道虫かな

風にそよぐオオムギ畑を通り越し地平近くに満月見えり

はる(6)

チラとだけお腹を見せて身をよじり仔ツバメははや土手の向こう

気がつけばすぐ足元に月見草だれにも告げず夜道を歩く

ホウホウとどこかで鳴いてるキジバトにいつか会いたし若葉の季節

はる(5)

雨上がり朝の光が眩しくて雀が歌う心地するなり

強風に押し流されて舞い戻る紋白蝶の日々は戦い

草叢を歩けば即座にバッタ飛ぶ二足歩行の巨人恐れよ

はる(4)

柔らかなヨモギの若草踏み越えて今年最初の草履の出番

この草を降りるか登るか決めかねるテントウムシはしばし動かず

青空に螺旋を描くトビを見て ゆっくり飲みほす水筒のお茶

はる(3)

大石を掴むトカゲは背と腹で春のぬくもり感じているはず

草陰のカラスアゲハがふんわりと木漏れ日避けて花蜜を吸う

数十のコウモリが飛ぶ夕暮れにぽっかり浮かんだ半分の月

はる(2)

空をゆく雲のクジラが太陽を一呑みにして街は翳れり

幾百の白き光に包まれて、午後の日差しに溶けゆく桜

県道の脇のスミレは風に揺れ車に煽られまだ今日も居る