2017-01-01から1年間の記事一覧

ふゆ(1)

横たわる黒雲の上の冬の日は沈み込む前、輝きを増す 雪の舞う野原に残る枯れ枝のモズは静かに狩場を見つめる 草の葉の地面に広げた手の上にしっかり残る霜の輪郭

あき(3)

アオサギはバサと飛び立つ金色の稲穂の揺らぎ後に残して 地に伏せた黄揚羽哀れ数匹の蟻近づいて風吹き止まず あぜ道を自転車こいで進みけり山並みの輪郭清き秋の朝

なつ(6)

ツユクサの小さく青い花の上に夏の青空こぼれ落ちたる 空色のトイレのタイルの真四角を斜めに動くハエトリグモかな 雑草の海に埋もれた畑から空を仰げば秋の雲行く

はいく(1)

曇天を切り裂いて飛ぶツバメの仔 対岸はすべて新緑 川の端 類を呼ぶまた里芋のおすそわけ 年に一度カワセミに逢う佳き日かな 蝉の音にくるまれて行く森の道

はる(8)

晩冬の夜明け近くの群青の空のどこかで烏が鳴けり 薄桃の桜並木の陰ぬけて春の日差しを再び浴びぬ ツバメからツバメに繋ぐ大空の曲線やまず動き続ける