アオサギはバサと飛び立つ金色の稲穂の揺らぎ後に残して
地に伏せた黄揚羽哀れ数匹の蟻近づいて風吹き止まず
あぜ道を自転車こいで進みけり山並みの輪郭清き秋の朝
ツユクサの小さく青い花の上に夏の青空こぼれ落ちたる
空色のトイレのタイルの真四角を斜めに動くハエトリグモかな
雑草の海に埋もれた畑から空を仰げば秋の雲行く
晩冬の夜明け近くの群青の空のどこかで烏が鳴けり
薄桃の桜並木の陰ぬけて春の日差しを再び浴びぬ
ツバメからツバメに繋ぐ大空の曲線やまず動き続ける
桑の木の下半分をオレンジに染めつつ沈む秋の夕陽
電線にちょいと乗りつけ、くるくると尾羽根ふるわすモズの到来
縦横に枝を巡らすクスノキの下を通って近道すなり
四枚の羽輝けるアキアカネ、影なき道をまっすぐに飛ぶ
夕空に肋骨みたいな雲浮かび涼しい風吹く秋の入り口
月を呑みまだらに光る夜の雲ゆっくり漂えクラゲのごとく
盛りあがる入道雲の瘤の上の空の青さは変わらざりけり
鮮やかな百日紅の花 目印に見知らぬ路地に迷いこみたり
水無月の満月照らす農道を影一人連れ気ままに歩く
明け方に沸き立つような椋鳥の声で目覚める夏の真ん中
雨音と雨の匂いに身を委ね遠い昔を思う夕暮れ
葛の葉をかきわけ森に帰ろうと、もぞもぞ急ぐ小綬鶏の仔
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